ロシア語に関する推薦書

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随時追加していきます。(  )は追加日です。

黒田龍之助『ニューエクスプレス+ ロシア語』(白水社)

語学好きで『ニューエクスプレス』を知らない人はいないだろうが、黒田先生のロシア語版はなんだか他とは違うと感じる。本文や会話の記述がまず面白い。話の展開が謎だったり、不毛だったり、読みながらじわじわ笑いがこみ上げてくる。入門書の入門書というぐらいの位置づけにしてあるので、かなり記述された事項は絞られている。同シリーズの他の言語より、「挫折しないで」という書き手の思いが伝わってくるかのようである。(2024/2/25)

佐藤純一『最新ロシア重要単語2200』(白水社)

単語帳というか、小さな辞書というか、いややっぱり単語帳である。例文付きでこのレベルの単語を網羅的に収録した類書はないので貴重な1冊である。CDはあまりあてにしないことである。発音記号や語形変化についての言及もあるのがなによりありがたい。(2024/2/25)

三谷惠子(2011)『スラヴ語入門』(三省堂)

現代スラブ語の特徴を言語学徒に向けてわかりやすく紹介してくれる本である。多くの日本語話者にはゲルマン語やロマンス語に比べてなじみがないであろうスラヴ諸語の「ふしぎ」を紹介して解き明かしてくれる。ロシア語の過去形はなぜ主語の人称・性に由来するのか、キリル文字の扱いなどスラヴ語独特のおもしろポイントが詰まっていて楽しい。(2024/4/24)

望月哲男『ロシア語対訳 名場面でたどる「罪と罰」』(NHK出版)

ロシア文学をロシア語で読むというコンセプトの本は多いが、学習者向けに原文を簡単に書き直しているものが多い一方、本書はドストエフスキーの原文そのものをテキストとしている。一般の学習者が原文に触れられるようにしてくれるのは本当にありがたい。やはり日本の語学書は素晴らしいなあと実感させてくれる一冊である。(2024/2/25)

安岡治子『総合 ロシア語入門』(研究社)

これは私が一番最近使った教材である。ロシア語教材はフランス語やドイツ語などに比べると選択肢が減るが、その中では一番手加減がない重厚感がある。ロシア語に限らずであるが、第二外国語の入門教材は、ハードルを下げる方向に向かうことが多い。そのため、初級教材は「難しくないですよ~」というスタイルになっていることが多いのである。それはそれで仕方がないのであるが、その弊害も確かにある。難しさを小出しにする方が結果的には学習しにくくなるなんてことはよくある。この本は、「入門」という名を冠している割には、後半の章は19以降のロシア文学作家の文を(膨大な語注と共に)読ませるなど、なかなか歯ごたえのある1冊になっている。「独習できるようにデザインされた」と書いてあるが、独習でこの本を使ってロシア語勉強するのは、なかなかハードルが高い。それなりに語学の経験がないと厳しいと私は思うのだが…。(2024/2/25)

柳町裕子『CDブック これなら覚えられる!ロシア語単語帳』(NHK出版)

ロシア語の単語集は、入門レベルでは各言語で展開しているNHK出版のこれか英語でもおなじみの『キクタン』ぐらいしかない。この教材は、実用的な例文とそれを手加減なしのナチュラルスピードで読み上げるCDが一番の売りである。発音や語形変化についてもう少し記載されてほしかったというのが希望である。(2024/2/25)

リューボフィ・ゴルボフスカヤ、安岡治子『基礎から学ぶ ロシア語発音』(研究社)

ロシア語の発音について詳しく述べた本書は、日本・海外の解説書を含めて、これが一番いい。私は数時間かけて書店のロシア語教材の発音の項をすべて読みあさったことがあるが、ほとんどが発音について、難しいところを曖昧に濁すか、そもそも触れずに通り過ぎていて、肝心なところがわからない。これは、その方針が間違っているというのではなく、実際に解説するとなると本書のように1冊の書籍になるぐらいの分量だから、多くの教材では発音について妥協した記述しかできないのだろう。中には、「ロシア語の発音を独学で身につけるのは不可能」なんて断言している書籍でもあったりする。そんなロシア語の発音を、初心者でもわかりやすいように丁寧に音声と共に解説してくれた本書はまさに画期的な1冊となっている。一見カタカナでも表せるようなロシア語の音が、実際にはどのように日本語や西ヨーロッパの他の言語と違うのか、類書に見られない答えがこの本の中にある。(2024/2/25)

Das Praxis-Grammatik Russisch: Das große Lern- und Übungswerk, PONS

ドイツの有名出版社PONSから出ているロシア語の文法書である。PONSは私が知る限り、日本の白水社・研究社と並んで、世界で最も優れた語学書を出版する会社である。本書はA1~B2までと銘打ってある通り、ロシア語の幅広い文法事項を十分深く扱っている。日本の分厚い中上級向けの文法書に長々と書いてあるようなことも、コンパクトにすっきりまとまっているので、その点も非常に使い勝手がいい。「不規則」で片付けられがちな格変化や動詞の活用も、原理までしっかり解説されている。素晴らしい教材であるが、もちろん、最大の弱点は、ドイツ語が分からないと使えないという点である。こりゃもう、どうしようもない。(2024/2/25)

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