語学のやるせなさを乗り越えるには、日本のことを話せるようになるといいってこと
日本のことについて英語で話す練習をしたことがあるでしょうか。案外ないという方が多いのではないでしょうか。それは、もったいない。今回は、そんなお話。
※この記事は『旧 やるせな語学』サイトにて2019年に投稿された記事を加筆修正したものです。
日本で育った人にしか見えない景色
日本で生きている限り、誰もが英語を勉強します。義務教育に英語という科目があるから当然のことです。
日本に生まれた人間がが英語を学ぶと言うことは、ある意味特殊なことかもしれません。
私たちからしたら当たり前のことが、海外から見たらそうでもなかったりします。
ドアは横にスライドしたり、外側に開いたり。
米を食べる。だいたい米。
刺身、天ぷら、そば、鰹・昆布だしのスープ。
風呂入る。銭湯行ったり、温泉行ったり。
畳、ひらがな、草履、のれん、カラオケ、おみくじ、ひな祭り…
こう考えると、日本には独自の世界が多くあります。その日本で話されている言語が日本語です。ひらがながあって、カタカナがあって、漢字がある言語です。
世界でひらがな・カタカナ・漢字を使う言語は、日本語だけです。
英語を学ぶ必要がある国は無数にありますが、日本語を使いながら英語を学ぶ国は、日本だけです。
日本人が英語を学ぶのは、ドイツやフランスに生まれた人が英語を学ぶのとは違うはずです。(どちらが優れているとかではありません。)
生まれもってアルファベットに囲まれて、冠詞や関係詞や完了時制を当たり前のように使いながら生きてきた人が英語を学習するのと、日本語話者が英語を勉強するのは違って当然です。
母国語をドイツ語とする人にはその人たちにしか見えない景色があるのと同様、日本語話者には日本語話者にしか見えない景色があります。
英語は世界中で学ばれ、話されていますが、この背景を背負っているのは日本語を生まれたときから話している人だけだと思うのです。そんな背景があるなら、それについてちょっとぐらい英語で話せた方がいいです。いいに決まっています。
やるせなさを乗り越える
語学をやっていると、ときどきやるせなくなることがあります。どれだけ覚えても、覚えることは無限にあります。
単語は2万語覚えたところで、ほとんどの日本人よりは多くの単語を知っているでしょうが、洋書を読んでも映画を見ても知らない単語は出てきます。
そこからさらに、イディオムや慣用表現、スラングなどがあります。
どれだけ勉強を重ねても、ネイティヴスピーカーが当たり前に理解できることを理解できないなんてことは、いくらでもあります。
そんなときは、日本について語る練習を私はするようにしています。日本について、当たり前のことを語ることができるのは、日本に生きる英語学習者の特権です。
英語はアメリカ人のほうが遙かにできますが、それと同じぐらい、私たちは日本のことについて知っています。
英語力はネイティブにはほど遠くても、その「なけなしの」英語力で日本について語ることができたら、英語を学習するのも、まあ無駄ではないかなと思えるかもしれません。
日本に来る外国の方は、私たちの当たり前にしばし興味があります。日本に来るということは、何かしら日本そのものか、「日本的なるもの」に興味があって、日本を目的地に選びます。
そんな人に、日本のことを分かってもらうには、ガイドブックを読んでもらうよりも、現地人である私たちに実際に説明したり実演してもらうことのほうがはるかに効果的です。
私たちは、この国に、ただ生きているというだけで、文字だけのガイドブックよりも影響力をもった存在になり得ると思います。それには、ちょっとだけ、確かな英語力と、日本についての確かな知識が必要です。
日本人が英語を勉強するのなら、そういった知識を身につけておくのは、やるせなくなったときの対処法として、とても役立つはずです。
練習していないと話せない
日本のことについて話すには、練習が不可欠です。
少なくとも私には練習が必要でした。
英検の1級を持っていても、「お地蔵さん」について英語で話せなんて言われて、即座に説明が出てくる人なんてほぼいないと思います。英語力がかなりある人でも、日本のことについて話すには、練習が必要です。
例えば、奈良がどういった場所か英語で説明できるという人は、奈良に住んでいて、英語がそこそこ得意だとしても、とっさにできるものではありません。
知識を整理して、英語で話す練習をして始めて、日本のことについて英語で話せるようになります。
それがあってはじめて、「地蔵は菩薩の一人で… 右手に錫杖、左手に宝珠を持ってたり… 守護神とされて…」という説明がでてきます。
専用の訓練があってはじめて、それと同時に、bodhisattva, jiso statue, priest’s staff, precious orb, gardian of…といった語彙が出てきます。
ただ英語ができるだけでは、こういった説明はまずとっさにできません。
地蔵は、ただ、石でできた何か、のままです。
まとめ
日本で英語を学ぶ人の中で、日本文化や日本の地理歴史など、日本のことについて話す練習をする人は案外少ない気がします。
私も語学を始めてからかなり後になって始めました。
中高の英語の教科書にはちょっとだけそういうコンセプトのレッスンもありますが、本格的なものではありません。
しかし、日本について話せるというのは、英語が使える人の中でも大きなアドバンテージです。
私自身、知り合いのネイティブスピーカーと話すとき、とても役に立つのが、この「日本のこと」について話す練習をしていた経験です。
そんなときは、語学をやっていてよかったと、素直に実感できます。
語学をやっていてよかったという実感を得るなんていうことは、実は結構貴重な経験です。ほとんどにおいて、語学は苦しみの連続です。やるせないものだと思います。
語学をやっていると、しばし、これに何の意味があるのだろうなんて考えに陥ったりします。
そんなときに、「これができてよかった」という経験があるだけでも、ずいぶん違うものです。
日本について語ることができるのは、日本人の大きなアドバンテージです。生かさない手はありません。
私は、次の本を使って、キーワードをひたすら音読し、暗唱するまで練習しました。