英文法の推薦書

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随時更新していきます。(  )は追加日です。

Andrea Tyler[著]; 中村芳久[監訳]『認知言語学を英語教育に応用する 応用認知言語学の方法』開拓社

タイトルは非常に興味を惹かれる内容である。本書を読んで役に立つのは、序盤で認知言語学についてのイントロダクションを簡単にしてくれている点である。第4章以降の内容は、実は実際の英語教育の現場でも(形は違えど)同じような内容がすでに広く行われているような気もするので、むしろ応用を扱った後半の方が私は新鮮さを感じなかった。注意であるが、これだけで認知言語学を学ぶことはもちろん無理である。(2024/8/18)

石田秀雄(2002)『わかりやすい 英語冠詞講義』大修館書店

英語を学習するとき、どこかで冠詞と向き合わないといけないという時が必ずやってくる。そんなときに手に取るべきは本書である。タイトルの通り、英語の冠詞が持つはたらきを、わかりやすく一通り解説してくれている。可算・不可算、単数・複数、不定冠詞・定冠詞など、誰もが何度も悩んだことがあるであろう事項に理論から迫るのは、やはり英語学習においては避けられない。(2024/3/6)

石原健志(2022)『受験英語をバージョンアップする ずっと使える英語力への15のTips』開拓社

最新言語学を学校教育、特に大学入試を中心とした英語指導につなげるというコンセプトで書かれている。単に入試に出る中で盲点となりがちな文法事項を扱うだけでなく、そこを起点に英文法全体を根本から再考できるようになっている。語順や統語を扱う14章は難しいが、あたり前に目にする英文を本当の意味で理解するためにも非常に有用である。(2024/3/7)

柏野健次(2012)『英語語法詳解 英語語法学の確立へ向けて』三省堂

語法学というとあまり聞き慣れないかもしれないが、実際に英語がどのように用いられるかに真摯に、徹底的に向き合った英語の使い方の集成である。特に英語を教える仕事をする人はすべてのページから学ぶことがあるはずである。本書が出版されたのは2012年で、それ以降、教育界では四技能改革が叫ばれはじめ、ネット上でも「間違った学校文法」「ネイティブならこう言う」といった類の情報があふれるようになった。それでも本書を超える情報を発信するウェブサイトも、動画も、書籍もいまだ登場してはいないのではないだろうか。(2024/8/18)

川原功司(2023)『英文法の教え方 英語教育と理論言語学の橋渡し』開拓社

最新言語理論と学校文法の橋渡しを試みた書籍として、手軽に読めて、簡単ではあるが様々な分野を網羅している。石原(2022)を読んだ後に進む本としてもおすすめできる。文法全体を概観しつつ、問題となる分野を解説してくれているので、ここから同シリーズのさらに専門的な書籍へと読み進めていくのにもよい。全体的に学校文法の現状に即した配慮がされている点もよい。(2024/8/18)

久野暲/高見健一 (2005) 『謎解きの英文法 文の意味』 くろしお出版

英文法の諸問題について、実例を挙げながら謎を解き明かすように解説してくれる本である。シリーズは全11巻あり、英語好きなら誰もが書店で見かけたことがあるだろう。一冊目に読むならこの「文の意味」がおすすめである。学校で習う英文法の定番事項を中心に、実際の英語の用いられ方を面白く読めるように解説してくれている。(2024/3/6)

久野暲/高見健一(2013)『謎解きの英文法 時の表現』くろしお出版

同シリーズの「文の意味」を読んだ後は、適当に自分の興味がある分野に進んでいくといいだろう。私の好みはこの「時の表現」である。高校英文法レベルであっても、正確な時制感覚を身につけるには、本書と後に紹介するミントン(1999)はぜひ読んでおきたい。他にも、学習者が間違えがちな could の用法や「絶対時制・相対時制」という最重要概念まで一通り学ぶことができる。(2024/3/6)

久野暲/高見健一(2004)『謎解きの英文法 冠詞と名詞』くろしお出版

同シリーズの中では「文の意味」「時の表現」と並んで最重要な1冊である。冠詞について本格的に扱う石田秀雄(2002)に進む前に読んでおくのが望ましい。冠詞以外にも、代名詞や限定詞について、盲点となりがちだが、英語の本質に関わる事項を説明してくれている。(2024/3/6)

久野暲/高見健一(2014)『謎解きの英文法 使役』くろしお出版

同シリーズ「文の意味」で出てきた使役の表現は最低限抑えた上で、さらに使役にまつわる英語の表現を考えていく。make や let に代表される迂言的使役文と、他動詞が語彙的使役で使われる用法の違いは特に重要である。英語の動詞、特に他動詞の本質を考えていくのにもつながっていく。(2024/3/6)

久野暲/高見健一(2009)『謎解きの英文法 単数か複数か』くろしお出版

文法問題などでついてくる「やらしいところ」は、名詞の数え方やら主語と動詞の一致やらである。やらしいところ、まとめて解説お願いしたいなら、本書にあたるとよい。特に重要なのは、people, audience, cattle, police などの単語の「数」にまつわる問題である。英米の違いにも注目したい。(2024/3/6)

クリストファー・バーナード(2013)『「底力」シリーズ5 句動詞の底力 「空間発想」でわかる広がる英語の世界』プレイス

句動詞は何より、現代英語の語彙の少なくない部分を占める重要な分野である。しかし、曖昧に扱われることが多く、単語や文法のように学ばれることが少ない。句動詞の知識は英語力に本当に直結する。この本ではまず、句動詞とはなにか、そしてそれを支える理論は何かを紹介する。熟語やイディオムと違う、独立したジャンルとして句動詞を考えることは英語学習を一歩進める上で非常に大きな意味をもつ。(2024/7/15)

佐藤良明(2022)『東大の佐藤先生と英文法を哲学する』アルク

英文法の根底にある考えを、非常にやさしい言葉で解説してくれる名著である。一通り文法を習った、あるいは指導者として教えた経験がある人が読むと、本書で語られる英文法の背景にある考え方に「なるほど」と膝を打つこと請け合いである。植物が芽を出し、枝を広げていくように、言葉の広がりを辿っていく道しるべがこの本の中に示されている。(2024/3/7)

田上芳彦(2023)『読解のための上級英文法』研究社

主に大学入試の読解問題から、ハイレベルな学習者に向けた文法事項を整理して紹介してくれる本である。上級者でも案外知らない、あるいは知ってるつもりで普段は通り過ぎていたといった構文が多く、勉強になる。イディオム的な定型表現と文法事項が並列して並んでいるので、単に覚える事項と応用を利かせる一般的ルールの区別をしながら勉強するといい。(2024/7/15)

出水孝典(2018)『動詞の意味を分解する 様態・結果・状態の語彙意味論』開拓社

「語彙意味論」という名の下に、Levin & Rappaport Hovav の研究を追いながら、動詞の分類、意味を考えていく。本書は一般向けに書かれた言語学の本だが、優れた言語本のお手本である。難しい理論を、過度に簡略化することなくわかりやすく説明してくれ、情報・論拠の提示の仕方が見事にはまっている。内容としては、本書では動詞に共通する構造(スキーマ)によって動詞を分類していくことで、何が見えてくるかを考えていく。これを読んで以来、私はこの内容を学校の授業でいかに役立てうるかをずっと考えている。(2024/8/18)

中島平三(2017)『斜めからの学校英文法』開拓社

学校英語と理論言語学の橋渡しをするコンセプトで書かれているが、内容としては石原(2022)や川原(2023)に軍配があがる。そもそも生成文法の理論では学校文法で身につけてきた直感に反するような内容が多い上に、論証がややこじつけのようになっていて、背景知識を持っている人でも首をかしげてしまう部分がある。to不定詞は法助動詞とするなら、その論拠を先行研究とともにもう少し示してもらわないと、さすがに受け入れがたい。ただ、最終章で語られる、本書が伝えるメッセージは英語学習者なら一読の価値がある。(2028/8/18)

畠山雄二(編)(2012)『くらべてわかる英文法』くろしお出版

英語学や言語学の書籍はハードルが高くて苦手という人も読めるやさしい英文法の本である。英語のふとした疑問や面白い現象について、専門家の気軽な語り口で解説してくれている。参考文献も充実しているので、さらに深い研究にも役立つ。no 比較級の説明など、私は今でもこの本で学んだ説明を仕事で使うことも多い。(2024/3/6)

畠山雄二(編)(2011)『大学で教える英文法』くろしお出版

表紙には、「就活の英語もTOEICも用は英文法!」と謳われているが、決して試験向けの英文法書ではない。英語の考え方の根本にあるものに触れるための本で、実際の学習ではこの内容をどれだけかみ砕いて自分のものにするかが鍵となるだろう。上記の『くらべてわかる英文法』より一回り骨のある内容になっているが、一般向けなので語学好きなら楽しく読める。専門書への橋渡しもしてくれるので最初に読む英文法の読み物としておすすめできる。(2024/3/6)

Huddleston & Pullum; 畠山雄二(編集委員長); 岩田彩志, 田中秀毅, 藤川勝也, 辻早代加(訳)(2018)『「英文法大辞典」シリーズ7 関係詞と比較構文』開拓社

ケンブリッジ英文法大辞典の完訳シリーズの第7巻である。学校文法で、とかく複雑な構文を扱うことになる関係詞と比較の内容を扱う。特に関係詞の方は to不定詞の形容詞的用法を関係詞として説明してくれたり、現代英語の統語論に則った厳密な説明を試みてくれているため、大いに参考になる。英語教員にもおすすめの1冊である。(2024/7/15)

Huddleston & Pullum; 畠山雄二(編集委員長); 保坂道雄(他)[訳]『「英文法大辞典」シリーズ9 情報構造と照応表現』開拓社

本巻では、情報パッケージ(情報構造)から、英文の姿に迫っていく。通常と異なる語順で示される内容は、どのようなニュアンスを伝えるのか、本シリーズならではの実例をもとに詳しく解説されている。倒置、分裂文、受動化など、学校文法で扱われる事項に、情報構造の観点から考察するのによい。より平易に解説された関連書籍は富士(2018)や久野/髙見(2005)など。(2024/8/18)

富士哲也(2018)『英文読解のグラマティカ』論創社

論理読解を学習するなら本書が間違いない。英文の情報パッケージという観点から、一般的な学習事項をテキストの論理関係の中に位置づけていく。本書を読んで感じるのは、英語が読める人が無意識のうちに脳内で捉えいる論理の流れの捉え方をよくぞここまでうまく説明できるものだということである。学習参考書としては非常にレベルが高いが、じっくりと読み解く価値がある。大学で必要な英語力とは論理を捉える力であると考えるなら、座右の書となるだろう。(2024/8/18)

ミントン, T. D.[著]/安武内ひろし[訳](1999)『ここがおかしい 日本人の英文法』研究社

ミントン先生の英文法シリーズは全3冊出ているが、最重要なのはこの第1巻である。というか、後の2冊は、言ってみれば本書の補遺のようなものである。長年日本で英語を教えてきた英国人の目線から、日本語話者に特有の英語の勘違いを多く指摘してくれている。特に時制を扱った部分はしっかり理解しておきたい。やや規範的なイギリス英語にこだわりが強い気もするので、他の文法書の説明と比較検討することも重要である。(2024/3/6)

溝越彰(2016)『言語と時間を考える 「時制」とはなにか』開拓社

時間は全宇宙に平等に流れるが、言語が変わると時制は変わる。日本語と英語を軸に、時にはその他の言語に言及しながら、各言語が時間という捉えがたいものをいかに表すかを考える。私のような時制マニアにとっては、面白すぎてページをめくる手がとまらない。進行形とはやはり一筋縄でいかない。未来形なんてあるのか。時制は、ほぼすべての英文が纏う要素であるのに、かくもつかみ所がない。だからおもしろい。テキスト言語学的観点に踏み込み、物語論への言及もある。実は共通テストなどの大学入試にも大いに関わる分野なのである。(2024/8/18)

山崎竜成(2022)『入試問題が教えてくれた言語事実47 知られざる英語の「素顔」』プレイス

大学入試に出てきた実際の英文を題材に、やや難度の高い文法事項を提示して解説してくれる本である。英語の中には、語彙にしても文法にしても、難度が高く規則から逸脱しているように見えるが割と頻繁に観察されるという現象は多い。そうした事象を受験指導のプロがわかりやすく解説してくれている。学校で習う英文法を批判する本ではなく、それにさらに磨きをかけて視野を広げるための本である。(2024/3/7)

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発音・文字・綴り字・フォニックス
英語史
英語辞書

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