英語史に関する推薦本

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随時更新していきます。(  )は追加日です。

朝尾幸次郎(2019)『英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」』大修館書店

いわゆる英語史の入門書として手軽に読める一冊で、現代英語の諸現象について一般の読者にわかりやすく解説してくれている。著者が取材しているのは、20世紀の英語を中心とした映画や小説が多く、その用例が豊富さが類書と一線を画す。(2024/2/23)

朝尾幸次郎(2021)『英語の歴史から考える 英文法の「なぜ」2』大修館書店

前著がイングランドを中心に英語史の概略を解説してくれていたのに対し、続編となる本書では、各地のスラングや俗っぽい表現に取材し、その背景を解き明かしてくれている。売れた語学書の続編は期待外れになることが多いのだが、本書は他の英語史の本ではあまり扱われない口語的な表現や非標準とされる英語を、実例を交えて大変詳しく解説してくれており、他の本では得られない発見がたくさんあった。(2024/2/23)

家入葉子・堀田隆一(2023)『文献学と英語史研究』開拓社

最新の英語史研究の動向を、一般の学習者や英語を仕事とする人が理解できるようにまとめてくれた本である。研究者向けのやや専門的な内容も含まれるが、英語史に日頃から興味がある人ならもっておいて損はない。第1章と第2章で示される英語史研究の最前線を概説してくれる類書は他にない。(2024/2/23)

家入葉子(2007)『ベーシック英語史』(ひつじ書房)

大学教養課程レベルの英語史の話題をわかりやすく解説した入門書である。上述の寺澤盾『英語の歴史』と並んで、私が何度も読んで、ほぼどこに何が書いてあるか暗記してしまったほどのテキストである。私が最初に読んだ英語史の本が本書であり、そもそもこの本から私は英語史の世界の面白さの虜になった。(2024/2/23)

片見彰夫・川端朋宏・山本史歩子[編](2018)『英語教師のための英語史』開拓社

英語史の研究成果と学校での英語教育を橋渡しするコンセプトで書かれている。実際に学校英語で重要になってくるのは第5部の現代英語の部分であるが、そこに至るまでの流れを概観できるようになっている。ただ、類書と比べて、英語教育に対する橋渡しが特段うまくいっているかというと微妙なところである。実際、英語史の成果を学校現場に生かすには、現場の教員の方から言語学の成果を貪欲に受け取りに行くことが求められるのだが、現状、そこまでうまくはいっている書籍はほとんど見受けられない。ただ、本書を他の英語史の本と比べて際立たせているのは、ベオウルフ、チョーサー作品、シェイクスピア作品といった時代を代表する文献について実際のテキストを多めに示して一般人に開陳してくれている点である。(2024/2/23)

唐澤一友(2016)『世界の英語ができるまで』(亜紀書房)

イギリスの英語史を中心に語られる類書とは袂を分かち、世界の英語とその歴史について知ることができる入門書である。とにかく読んで面白い。英語とはイギリスやアメリカだけのものでない。各地の英語にはどんな背景があって、どのように発達し、どのような用法が見られるかということは盲点になりがちである。様々な “Englishes” が広がりを見せる現代世界の言語事情を読みとくには必読の本と言っていい。(2024/2/23)

寺澤盾(2008)『英語の歴史 過去から未来への物語』(中公新書)

英語史の入門書の中では、現状最も手に取りやすく、内容的にも十分満足できる。まず最初に手に取る英語史の本として、私はいつも本書を推薦している。最終的には現代の英語を扱っているため、発行年の2008年の時点で記述が止まっている点がややさみしいところではある。とにかく何回も読んだ、私としても愛着のある入門書である。ゼロ派生や助動詞の意味変化の背景など、類書では言及されていない事項も説明されており、今でもことあるごとに手に取ることがある。(2024/2/23)

中尾俊夫・児馬修[編著](1990)『歴史的に探る 現代の英文法』(大修館書店)

英語教員として英語の通時的な文法変化を調べるには本書が最も有用であり、私も何度も読んだ上に何度も参照している。古英語や中英語の知識がある程度ある方が圧倒的に有用である分、読者は限定されそうだが、日本語で書かれた歴史文法の本としては他の入門書では省略されている部分まできっちり説明されていて助かる。(2024/2/23)

橋本功(2005)『英語史入門』慶應義塾大学出版局

大学の教科書のスタイルで書かれている手堅い英語史の入門書である。入門向けの本では省かれがちな外面史と文字の歴史を序盤でしっかりと扱ってくれている点も重要である。英語史を幅広い視点で本格的に学んで行くときに最初に手に取るべき1冊である。(2024/3/28)

保坂道雄(2014)『文法化する英語』開拓社 言語・文化選書

「文法化」というテーマで現代英文法の核となる事項の変遷を説明してくれる。統語論の基礎知識をもった読者を想定しているので、その点は注意が必要である。冠詞の文法化から導入し、本格的な統語論へと発展させていく構成がわかりやすい。古英語の知識がある方が面白く読めるのは確かである。(2024/4/24)

堀田隆一(2016)『英語の「なぜ?」に答える はじめての英語史』研究社

現代英語で観察される疑問を出発点とし、英語史全体を視野に入れつつ背景を説明してくれる。学術的にも完成度が高く、よくある思い込みや見落としがちな点を鋭く指摘してくれている。この本の最大の魅力は、なんと言っても著者の英語、そして英語史への愛が紙面のすべてから伝わってくるところである。読者と問いを共有し、英語の面白い世界へとやさしく誘ってくれる。著者のブログやラジオは毎日更新されており、英語史を勉強するなら絶対にチェックするべきである。(2024/3/28)

Crystal, David (2002) “The English Language” London: Penguin

本書のテーマはとにかく「英語」である。英語を学ぶならこの著者の本には何度も出くわすことになるであろう。ネイティブ目線から現代英語の「?」となる点について解説してくれたり、英語史の概略を提示してくれる。英語好きなら間違いなく楽しめる。(2024/2/23)

Hogg, Richard M (general edited) (1992) “The Cambridge History of the English Language Vol. 1 The Beginnings to 1066” Cambridge University Press

ケンブリッジ大学出版会が出している全六刊に及ぶ英語史の大著。専門書の中でも最も重厚な部類であり、本格的に英語史について調べたいときは、私は本書に当たることにしている。今では何せ値段が高い(泣)。私は古本で全6巻中、古英語の1巻と中英語の2巻と世界の英語を扱った5巻だけなんとか手に入れた。古英語を中心に勉強していることもあって、この第1巻を参照することが一番多い。本書で調べてわからなかったら、諦めがつくものである。(2024/2/23)

Ringe, Don (2017), “From Proto-Indo-European to Proto-Germanic” 2nd Edition, A Linguistic History of English: vol. 1, Oxford University Press

英語史やゲルマン語の歴史を本格的に勉強するには、やはり印欧語最古の源泉に足を踏み入れないといけない。そのための本である。最新の研究動向を踏まえつつ、印欧語からゲルマン祖語への言語変化を、最も標準的とされる理論を中心に整理してくれている。言語学の知識を備えていることを前提に執筆されており、加えて本書の内容をしっかり実感をもって理解するには、ギリシャ語・ラテン語・古英語の基礎知識はやはり持っておきたい。構成は印欧語の概説→印欧語からゲルマン語への変化→ゲルマン語の概説という手堅いものである。(2024/4/14)

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