古英語の推薦書

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随時更新していきます。(  )は追加日です。

Atherton, Mark (2019), “Complete Old English, A Comprehensive Guide to Reading and Understanding Old English”, Teach Yourself

私が最初に使った古英語のテキストである。Teach Yourself の語学書シリーズは各現代語から古典語までたくさんラインナップがあるので、知っておいて損はない。非常に勉強しやすいスタイルで独学にも使える。最後の方の「ベオウルフ」や「モールドンの戦い」のテキストは難しいが、単語を調べながらじっくり読んでいくとなんとか読みこなせる。惜しむらくは、文字の上に発音の補助記号がついていないことである。あと、音声付きであるのはありがたいが、その朗読が決して語学書にふさわしい聞きやすい読み方ではない点である。(2024/2/29)

Baker, Peter S (2012), “Introduction to Old English: Third Edition”, Wiley-Blackwell

古英語のテキストの中、大学でよく使われるのは通称 Michel and Robinson という緑色の本だが、独学にはこちらの Baker氏の入門書の方が使いやすい。文法の説明は簡潔で的を射た説明で、最後の読章も充実している。音韻変化や詳しい形態論は Hogg(2002) や HasenfratzJambeck(2011)などで補いつつ古英語の世界にさらに親しむのに最適である。(2024/3/1)

Hall, J.R. Clark (1894), “A Concise Anglo-Saxon Dictionary” University of Toronto Press

現在手に入るほとんど唯一の古英語の辞書である。ペーパーバック版で、単語の説明は最小限だが、文章を読んでいて載っていない単語はまずない。初版は古く、語義説明に使われている英語もややとっつきにくいが、他に選択肢がないのでしょうがない。改めて古語辞典が当たり前のように書店に並ぶ日本語との違いに驚くほかない。(2024/3/1)

Hasenfratz, Robert/Jambeck Thomas (2011), “Reading Old English: A Primer and First Reader: Revised Edition”, West Virginia University Press

結局、言語学の本をどれだけ読んだところで、英語のことを本当に理解したいなら、古英語を「言語」として勉強するしかない。そしてこの本は「語学書」としての古英語の本として間違いなく最高の本である。格変化は覚えるしかないし、音の変化も覚えるしかない。そして覚えるための言語理論の説明を徹底的にしてくれる。私は本書の例文と練習問題の文をノートに書き写し、古英語作文をやって勉強した。(2024/2/29)

Hogg, Richard/Alcorn, Rhona (2002),“An Introduction to Old English: Second Edition”, Edinburgh University Press

Hogg 大先生による、古英語の言語としての入門書である。主に英語圏で英語史・古英語を勉強する大学生に向けて書かれている。古英語の本にはよくあることだが、ドイツ語が引き合いに出されることが多いので、できたらドイツ語を勉強しながら読みたい。語学書と違い、語形変化の背景にある音変化を説明してくれており、目から鱗の解説が多い。(2024/2/29)

Hogg, Richard M (general edited) (1992) “The Cambridge History of the English Language Vol. 1 The Beginnings to 1066” Cambridge University Press

ケンブリッジ大学出版会が出している全六刊に及ぶ英語史の大著。専門書の中でも最も重厚な部類であり、本格的に英語史について調べたいときは、私は本書に当たることにしている。今では何せ値段が高い(泣)。私は古本で全6巻中、古英語の1巻と中英語の2巻と世界の英語を扱った5巻だけなんとか手に入れた。古英語を中心に勉強していることもあって、この第1巻を参照することが一番多い。本書で調べてわからなかったら、諦めがつくものである。(2024/2/23)

Marsden, Richard (2015), “The Cambridge Old English Reader: Second Edition”, Cambridge University Press

タイトルの通り、古英語の重要な文章をひたすら読んでいくテキストである。文法の説明は最低限なので、どれかの教材で一通り勉強してからの方が取り組みやすい。類書の中では圧倒的に幅広いジャンルのテキストが採用されており、古英語の世界の広がりを1冊で体感できる。単語には簡単な語注がついているが、結局巻末の語彙集で調べながら正確に意味を把握して読んでいく方が効率がいい。そして出てきた単語はとにかく覚えることである。(2024/3/1)

Snyder, Patrick T. (2017), “Old English Verbs”, Tiw’s Arm

個人出版の本だが、独学の学習者にはありがたい、動詞の活用本である。弱変化・強変化・過去現在動詞など、重要な古英語の動詞の活用を載せてくれている。アルファベット順に配列されただけのシンプルな本なので検索もしやすい。派生語などの指摘もあり、語彙学習に大いに役立つ。(2024/3/1)

Snyder, Patrick T. (2017), “Everyday Old English: A Modern Anglo-Saxon Phrasebook”, Tiw’s Arm

現代のレストランやホテルなど、日常会話を古英語で楽しむための本である。やっぱり古典語といえど、語学はこうでなくっちゃ。学術的な話に終始しがちな古英語の世界を彩り豊かにしてくれる。ドイツ語やアイスランド語など、ゲルマン語の語彙について考えることにもつながる。(2024/3/1)

Videen, Hana (2021), “The Wordhord: Daily Life in Old English“, Profile Books

古英語が実際に使われた中世ヨーロッパの生活を描写しつつ、重要な古英語の単語を紹介してくれる最高の本である。私が古英語を本格的に学習していくきっかけになったのも本書だった。一言で言うと、非常にうまく書かれた「古文常識」「古文単語」の本だと思えばいい。読むと古英語の魅力に取り憑かれること請け合いである。(2024/3/1)

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