英単語を覚えるのは、なぜ大変か【英単語を本気で覚え始める前に知っておきたいこと①】

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英語はヨーロッパの多くの言語と比べて、語彙が非常に豊富な言語と言われます。英語という1つの言語の中で、様々な外国語の影響が混ざりあっているのがその要因です。英単語学習を本格的に始める前に、こうした英語の背景を知っておくと役立つことがたくさんあります。

ヨーロッパの言語は、すごく大雑把に分けると次の3つの語派に分かれます。いずれも印欧祖語という共通祖先から派生したグループたちです。

【ゲルマン語派】
ドイツ・スイス・オーストリアから、北海沿岸、スカンジナビア半島といったヨーロッパ中央部から北部にかけて広がる言語群。
例:ドイツ語、オランダ語、デンマーク語、スウェーデン語、ノルウェー語、アイスランド語

【イタリック語派】
地中海沿岸の西ヨーロッパから南ヨーロッパを中心に見られる言語。この語派の古典語はローマ帝国の公用語で長らくヨーロッパの教会・学問の共通語であったラテン語である。
例:イタリア語、スペイン語、フランス語、ポルトガル語、ルーマニア語

【バルト・スラブ語派】
ラトビア語とリトアニア語といったバルト海沿岸に見られるバルト語と、ロシア語などに代表されるスラブ語の総称。それぞれを別の語派とみることもできるが、共通点も多く、ひとまとめにすることもある。
例:ロシア語、ウクライナ語、ベラルーシ語、ポーランド語、チェコ語、スロバキア語、ブルガリア語。

3つに分類できるとは言っても、ギリシャ語やアルメニア語のように、これらのいずれにも属さないヨーロッパ系言語もありますし、フィンランド語やハンガリー語などのように、そもそもヨーロッパ系でない言語もあるので、これはあくまで少数派を犠牲にした分類です。さて、それを踏まえた上で、英語はどの語派に属するかご存じでしょうか?

上記の分類の中では、英語はゲルマン語派に分類されます。ローマ帝国が崩壊した後の5世紀頃、ゲルマン民族がグレートブリテン島に移住したことから英語の歴史は始まります。そのため本来、英語はゲルマン語なのです。ゲルマン語系の語彙と書いてあるときは昔からずっと英語にある語彙ということです。

しかし、なかなか単純にいかないのが英語です。英語は「本来は」ゲルマン語でありながら、その長い歴史の中で、ラテン語系の言語から多大なる影響を受けました。これはもう、英語が言語として生存したのが不思議に思えるぐらいの圧倒的な影響でした。(これについて詳しくは別の記事で。)

英語はヨーロッパの言語の中でも、非常に語彙が豊富な言語と言われています。私たちが使う単語帳があんなに分厚く、多くの単語を収録しないといけないのは、現代英語の単語は大部分がラテン語系統からの外来語(言語学用語で借用語)だからです。私たちが学習の最初期段階で勉強する単語はゲルマン語由来のものが多いですが、高校レベルとなると、単語帳のほとんどはラテン語系の単語です。

ゲルマン語由来
本来語
ラテン語由来
フランス語由来
借用語
現代フランス語
getobtainobtenir
keepmaintainmaintenir
bearendureendurer
teachinstructinstuire
sayremarkremarquer

例えば、母語がフランス語の人は、ラテン語系の英単語なら、多くの場合、そもそも見たら意味がわかります。一方、母国語のアドバンテージのない日本語話者が英単語を覚えるのは非常に大変です。だからこそ、日本語話者が英単語を学習した効果を長期的に維持できるようになるには、体系的な単語の整理が欠かせません。中級レベル以上の語彙学習では、いかに一つの要素で複数の事柄を説明する、あるいは既知の事柄で未知の事柄を説明することができるかが大きな鍵になります。語彙マスターへの真の道はこの事実を知ることから始まります。

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yarusena
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巷の英語教員・語学人間
2019-2020年にかけて存在したサイト『やるせな語学』をリニューアルして復活させました。いつまで続くやら。最近は古英語に力を入れています。言語に関する偉大な研究財産を、実際の学習者へとつなぐ架け橋になりたいと思っています。
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