【The Economist で英語学習】難易度高い英文とイギリス英語らしさを攻略する

imaizumisho

イギリスの高級紙にThe Economistというものがあります。内容もさることながら、高次元の英語力を身につけるにはとても有用な雑誌です。今回はそんな The Economist誌の英語についてその特徴と活用法を考えてみます。

購読は結構お金がかかるのですが、アプリや公式サイトを使うと無料でもある程度使うこともできます。英検1級レベルそれ以上の学習に役立つその活用法も解説してきます。

※この記事は2019年5月18日に『(旧)やるせな語学』に投稿された記事を再投稿したものです。

The Economistとは

アメリカにはTIMEという週刊誌がありますが、イギリスにはThe Economist(以下、Economist)という似たような雑誌があります。

Economistという雑誌は、イギリスを始め世界の知識人層に支持される「高級な」雑誌であるといえるでしょう。

アメリカのTIME誌に比べても文字の割合が多く、文章も一回り複雑になっているという印象を受けます。英文は、新聞のように簡潔に情報を伝えるという側面もありつつ、凝った文章表現を駆使した技巧的表現も多く含まれています。

イギリス的な皮肉を効かせた記述やイディオム的表現もあり、はっきり言って、英文は非常に難易度が高いです。その分、表面的ではない本格的な英語力を身につけるには適した題材であると言えるでしょう。

The Economist英文の特徴

Economistの英文を本格的にしている要素はたくさんありますが、すべての記事に共通する要素がいくつかあります。

以下では、2018年8月4日版のトップ記事 “In the line of fire” を題材に、英文の特徴を概観していきます。この記事は、昨年夏にカリフォルニアで起こった大規模な山火事を皮切りに地球全体の環境問題について現状を述べたものです。

その英文の特徴は次のような点が挙げられます。

難易度が高い語彙が頻出

本格的な報道の英語には所謂「英検1級レベル」とされるような難易度の高い語彙が頻出します。Economistの英文ももちろん例外ではありません。

「英検1級に良く出るような語彙」というのは報道英語で使われるような高尚な語彙とも非常に相性が良いです。英検という試験自体が、世界の諸問題にコミットした題材を使用しがちであるという点とも無関係ではないでしょう。

先述の記事に出てくる難単語を挙げてみると以下のような感じです。

smoulder, swath, suffocate, calamity, freakish, furnace, berserk, swelter, induce, subsidy, dwindle, stall, surge, blustery, yank, sceptic, averse, fume, decarbonisation, complexity, forge, behemoth, inertia, lobby, entrench, ignite, countenance, cripple, illusory, sturdy, listlessness, abate, avert, poise

いかがでしょう。

たった1ページほどの程の記事にこれだけの難単語が含まれます。英検準1級レベルの英語力を持っている人でもかなり知らない単語があるのではないでしょうか。

やはり、このレベルは英検1級レベルであるというところは明らかでしょう。大学入試でもこのレベルの語彙をこれだけ含む問題はほとんど見られません。

比喩的表現

Economistの英文を難しくしている要素は単語だけではありません。難しい単語が分かったからと言って読めるわけでもないのです。

Economistの英文には非常に多くの比喩的表現やイディオムが含まれます。この点が新聞記事の英語と最も違う点であると思います。

新聞記事やテレビ・ラジオの日刊ニュースなどでは、簡潔な表現でその日の出来事を報道する必要があります。一方、週刊の雑誌の場合は、世の中の出来事について、より深い考察や多面的な見方が提示される傾向にあります。

その分、Economistでは報道の英語でありながら、文学作品に見られるような比喩的表現やイディオムが多用される傾向にあります。

多くの日常語彙には「文字通り」(literal)な意味と、「比喩的」(figurative)な意味が共存しています。例えば、文を見てみてください。

A 太陽は東から昇り、西に沈む。

B 君はぼくの太陽だ。

天体としての太陽そのものを表すAに対して、Bはそれを人に当てはめた表現です。Aが「文字通り」の意味だとしたら、Bは「比喩的な」意味であると直感的に分かるでしょう。

Economistの英文にはこのような比喩的表現を多用することで、記事で語られる内容を、より読み手の感覚に迫ったものとするような文章が多いです。

実際の例を見てみましょう。例は地球温暖化に関する記事からの引用です。

「暑い」ということを表すために、hotという単語を使わず、次のような様々な表現が使われます。

  1. Earth is smouldering.
  2. Elsewhere people are suffocating in the heat.
  3. the industrial age’s first furnaces were lit
  4. weather patterns will go berserk
  5. this sweltering European summer (…)

記事の最初2段落のうちに以上のような表現が出てきます。

これらはすべて、何らの「暑さ」を表現する言い方ですが、様々な表現が駆使されていることが分かります。

最初の文は文章全体の1文目です。smoulder(米:smolder)という単語は、「煙などがくすぶる」というのが本来の意味です。「地球がくすぶっている」というのは「地球の温度が上がっている」ということの比喩的表現になっています。

②のsuffocateは「窒息する」

③のfurnances were litは「炉は点火された」

④のgo berserkは「凶暴になる」

⑤のswelteringは「うだるような」

いずれも「暑さ」を表すために様々な表現を使うことで文章に奥行きを与えています。

イディオム

Economistの英文にはイディオムも多く登場します。先ほどの比喩的表現と関連している部分が多いのですが、聖書やシェイクスピアに由来するような「文学的」なイディオムが使われたり、ことわざや有名なフレーズをもじったような造語も使われるのが特徴です。

実際の例を見てみましょう。例は地球温暖化に関する記事でした。

(…) mankind (…) will muddle through to a victory over global warming.

動詞にはmuddle throughというイディオムが使われています。muddleはもともと「雑然と散らかったがらくた、ごたごた」といった名詞です。muddle throughで「(もたもたしながらも)なんとか達成する」みたいな意味になります。

victory over global warmingは「地球温暖化に対する勝利」という直訳ですね。これも一種の比喩的表現です。

この記事に出てきたイディオムには次のようなものがありました。

  1. yank A out of B
  2. hook up to
  3. wean A off B
  4. strip A out of B
  5. clean up
  6. scrub A from B
  7. beaver away
  8. bear the brunt of ~
  9. fire up

これらの熟語・イディオムは直訳の単語とはまた別のものとして覚えておかないと意味が分からないものも多いです。

⑦のbeaver は動物の「ビーバー」ですが、beaver awayというイディオムとしては「がむしゃらに動く」といった意味になります。

一文が長い技巧的英文

Economistの英文は、一文が長く、挿入や倒置を駆使した複雑な英文になることもしばしばです。これもどちらかというとイギリス英語の特徴になります。

次の英文を見てみてください。

Scientists have long cautioned that, as the planet warms – it is roughly 1℃ hotter today than before the industrial age’s first furnaces where lit – weather patterns will go berserk.  An early analysis has found that this sweltering European summer would have been less than half as likely were it not for human-induced global warming.

連続した2文ですが、一文目は挿入、2文目は仮定法の倒置といった構文が使われています。どちらも英文解釈の問題になってもおかしくないような構造をもった英文になっています。

1文目は、cautioned that (…) wather patterns will go berserk. という英文にas the planet warmsという節が入っていて、それをさらに説明する文がハイフンで挿入されているという構造です。

2文目はwere it not for が if it were not for ~ (~がなければ) という(受験でよく見た)表現の倒置した形になっています。

イギリス的(?)表現

比喩的表現、イディオム、複雑な文というのは、どちらかというとイギリス英語と相性の良い特徴です。

Economistの特徴として、皮肉を利かせた言い回しや言葉あそびのような表現も多く見られます。ユーモアとアイロニーもイギリス的表現には欠かせません。

この記事の最後は次のような文で締められます。

Perhaps global warming will help them fire up the collective will.  Sadly, the world looks poised to get a lot hotter first.

一文目はこれも比喩的な表現で、「地球温暖化は(各国の)集団意思を突き動かすのに役立つだろう」といった意味です。fire upは直訳では「燃え上がる」でしょうが、「始動させる、かき立てる」ぐらいの意味で使われます。

Earth is smouldering.(地球はくすぶっている)という一文から始まった英文でしたが、「温暖化が人間の意思を炎のように燃え上がらせる」とった内容を示唆する英文で締めくくるわけです。

最後の文では悲観的に今後の展望を述べるわけですが、ここでは「暑さ」を素直にhotterで表しています。

これらの文は、次のような内容を示唆しているわけです。

人間は温暖化についてなかなか効果的な措置をとらない。

→(灼熱の暑さの)温暖化が進んで初めて人間の行動に火がつくだろう

地球が取り返しがつかないぐらい熱くなって初めて人間も熱くなる、というのが皮肉を込めて語られます。

直接的ではありませんが、現状に皮肉を込めたような記述で記事を締めくくるのがEconomistの王道パターンです。

Economistを読むには

Economistはいくつか購読のパターンがあります。以下ではその方法について解説しておきます。

雑誌を購読

  • 雑誌そのものが手に入る
  • 値段が高い
  • 発売数日遅れで届く
  • 全部読むにはかなりの時間がかかる

じっくり腰を据えて読んでいきたいなら雑誌を購読するのがいちばんです。

購読は公式サイト日本の雑誌購読サイトで申し込みが出来ます。

購読のメリットはなんと言っても雑誌そのものが手に入ると言う点です。洋雑誌を読んでいるという実感をもつことができます。これも学習の喜びのひとつだと思います。

ただ、Economistの購読は値段が高いです。(泣)

1部1000円以上しますので、結構な出費になります。TIMEの購読が1部あたり300円程度までなることを考えると、Economistは割高になってしまいます。

ある程度読むのに時間をかけることを前提にしていないとちょっともったいないですね。また、雑誌は金曜日に発売ですが、自宅に届くのは2~3日遅れになることが多いです。(地域にもよるでしょう)。

電子版の購読だとパソコン・タブレット・スマホで読めて発売日から読むことができます。

公式アプリ(おすすめ)

  • 無料
  • 音声付き
  • 発売日から読める
  • 3記事限定

Economistを手っ取り早く読んで見たいなら公式アプリがなによりおすすめです。

公式アプリでは、Economistの雑誌記事を毎週3つまで無料で読むことが出来ます。発売日から最新の記事を無料で読めるので、1000円/1部という購読料を考えると、現実的な手段となるでしょう。

また、アプリでは記事を読み上げる音声も無料で提供してくれています。この音声はかなりゆっくりスピードですが、なにせ無料ですのでイギリス英語に親しむ題材ぐらいにはなります。

音声在り、文字の大きさを変えたり背景の色を変えたり、オフラインで読めるようにできたりと、Economistアプリは何かと使い勝手が良いです。

公式サイト

  • 無料
  • 3記事
  • アプリと違う記事が読める
  • 広告多い

Economistの記事は公式サイトでも読むことができます。メールアドレスだけで無料会員登録をすると週3記事が公式サイトで読めるようになります。

この記事はアプリと違う記事を選ぶこともできるので、アプリと組み合わせて使うと週6記事読める計算になります。

広告は多く何かと購読を勧めてくるので、私は記事をワードにコピペして印刷して読んでいました。じっくり読むには紙媒体にしてしまうのもおすすめです。

まとめ

Economistの英文はTOEICや英検などの長文問題より何段階か洗練されたような文章になっています。

難易度は高いですが、題材もおもしろいですし、英検・TOEFL・IELTS(アカデミック)といった試験とも相性のいいテーマが目白押しです。

イギリス的な凝った表現や皮肉めいた言い回しにプロが書いた英文で触れられるのもありがたい機会です。

本格的に読みたいなら購読、気軽に試してみるならアプリや公式サイトでまずは記事に触れてみてはいかがでしょうか。

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yarusena
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巷の英語教員・語学人間
2019-2020年にかけて存在したサイト『やるせな語学』をリニューアルして復活させました。いつまで続くやら。最近は古英語に力を入れています。言語に関する偉大な研究財産を、実際の学習者へとつなぐ架け橋になりたいと思っています。
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