英検1級の【要約問題】で満点をもらったので、新形式について考察してみる

imaizumisho

2024年度より、英検に要約問題が登場しました。それを体感すべく、私もこのたび数年ぶりに英検を受験しました。結果から言うと、要約問題は満点がもらえました。この記事ではその答案を公開し、どのような考え方で取り組むと良いか簡単に検討してみます。

新形式! 要約問題

この度の試験形式の変更で、英検2級以上の級に要約問題が登場しました。筆記(リーディングとライティング)の時間は変わらないので、リーディングの問題数がやや減少し、その分、ライティングの分量が増えたことになります。

1級では今回、299語の文章を90~110語の英文に要約することが要求されました。

要約!難しそう!と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそれほど骨の折れる問題ではないという印象です。

まず、要約にしては語数にかなり余裕があります。要約問題として有名な英語入試は、東大の第1問Aや早稲田大学文学部・文化構想学部の最後の問題が真っ先に思いつきます。いずれも文章全体を本当に短くまとめないと解答できないような試験です。そう考えると、題材の語数が300語で、それを100語でまとめるとなると、かなり語数に余裕があると感じてしまいます。実際、要約とは言え、いろんなアイディアを解答には盛り込むことができます。

実際のところは、本文で述べられている事柄から具体例や同じ内容の繰り返しを除くと指定の語数になってしまいます。あとはどれだけ本文の内容を言い換えられるかがポイントになるだろうと思われます。

さらに、この問題文ですが、英検1級の長文問題よりも一回り読みやすい短い文章です。それほど読解に苦労することもなく、筆者のポイントも明確です。

以上を考えると、要約問題、恐れるほどではない!というのが今回受験した印象でした。

英検の要約問題

  • 本文を3分の1ぐらいの分量の英文にまとめる。
    →要約問題としては十分語数に余裕がある。
  • 本文の重要箇所をつなぐと自然に指定語数になる。
    →書き換え能力が重要。
  • 本文は読みやすい。

満点をもらった答案

今回、私は新形式の英検1級を受験し、要約問題は満点の評価を得ることができました。実際の解答を書き残しておいたので、ここで紹介します。(英検の本試験では問題用紙を持ち帰ることができるため、ライティングの解答をメモしておくことができます。)

実際の問題は英検の公式サイトからダウンロードできます。

【私が今回書いた解答】

The centralization of world’s population on metropolitan areas has been ongoing for over a century. It is mainly caused by people’s general tendency to leave rural areas in search of better life. However, this has led to some severe problems: transportation and supply networks suffocating to deal with citizens’ overgrown demand, and insufficient numbers of residence and public services. One solution to this is “land reclamation”, through which the sea is altered into land, but it takes considerable costs and efforts to maintain such land.

85 words

本文のアイディアから重要な部分を抜き出すのは比較的容易にできます。各段落のトピックも明確です。先述の通り、具体例や同じ内容の繰り返しを省くと、自然とこのぐらいの内容になるはずです。

私は試験場で、本文を一読した後、構成はそのままで、語彙や構文などの表現をできるだけ書き換えて使うようにまとめました。その際、フォーマルな書き言葉にふさわしい語彙を中心に選定しました。その結果できたのがこの解答例です。間違いも含めて実際の解答そのままですので、ご参考にどうぞ。

本文の単語をそのまま使わないことを徹底したつもりでしたが、途中の “supply networks” だけはどうしても類似の表現が重いつかなかったのでそのまま使いました。語数は指定された語数よりも短いのですが、特に減点の対象とはなっていないようです。英検の指定語数は、あくまで suggested length ですので、多少(結構?)増減してもスコアにこれまで影響したことはありませんでした。

実際の成績表。要約問題が満点だと聞くといい感じであるが、その他の出来は決して褒められたものではない。

結論と考察

要約問題が出題される試験は現状、あまりありませんので、英検独自の変化を打ち出したともいえます。ライティングの分量が多くなり、そして昨今、英検の受験者も多くなっていることを考えると、どのように採点をしているのか気になるところです。

ひょっとしたら最新技術(AIなど)を使った採点の高速化システムが可能になったからこそ実現した変更なのかもしれません。実際、これまでIELTS, TOEFL, ケンブリッジ英検といった世界基準の試験に比べ、日本の英検はライティングの分量が極端に少ない試験でした。ケンブリッジ英検のうち、英検1級と同等とされるCAE(C1)では、ライティングは90分で250語前後の文章を2本書きます。そう考えると日本の英検のライティングは従来かなり「小さくまとまった」問題であったわけです。

今回の新形式で、リーディングとライティングの技能の差が埋められたことが見て取れます。また、先ほど挙げたIELTS, TOEFL, ケンブリッジ英検にはライティングに文章の要約問題という形式は存在しません。これは日本の英検独自の問題ということになります。

ある短いテキストを用意し、それを3分の1ぐらいの長さに要約するとなると、どの観点が盛り込まれているかを判断する基準も定めやすく、分量的にも採点の負担が大きくなりすぎずに済むのかもしれません。

受験者としては、以前の試験より時間の余裕がなくなったという印象があります。私は英検1級の筆記試験においては、旧形式では40分ほど時間が余ることが多かったのですが、今回はじっくり要約問題に取り組み、10分ほどの余裕しかありませんでした。ネットに流れる感想を見ていると、多くの受験者が同じような印象を抱いたようです。

この形式が定着するのはこれからでしょうが、全体としてはより完成度の高い試験になったという印象があります。

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yarusena
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巷の英語教員・語学人間
2019-2020年にかけて存在したサイト『やるせな語学』をリニューアルして復活させました。いつまで続くやら。最近は古英語に力を入れています。言語に関する偉大な研究財産を、実際の学習者へとつなぐ架け橋になりたいと思っています。
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