英検1級を取得した後に、ケンブリッジ英検の最高峰CPEの問題をやってみた話
世界には英検1級を超える英語試験があるものです。その名も、ケンブリッジ英検CPE(C2 Proficiency)。かなり難しいテストですが、私は今回この問題に2回チャレンジしました。英検1級(C1)レベルの学習者である私が、そのCPEの問題をやってみた結果と感想を報告します。
※ この記事は『(旧)やるせな語学』(2019年2月)に投稿されたものを、加筆修正したものです。
CPEのレベル
日本の英検は、近年改良がなされてCEFRとの対照性を意識した配点になっています。
現在の日本の英検はだいたいCEFRでいう次のレベルに該当するとされています。
(ちなみに、ケンブリッジ英検は英語の試験としては唯一、CEFRに完全準拠した試験です。他の試験では、あくまで試験作成機関が「CEFRのこのぐらいです」と自称しているに過ぎません。)
ケンブリッジ英検 | 日本英検 | |
C2 | CPE (Proficiency) | 該当無し |
C1 | CAE (Advanced) | 1級 |
B2 | FCE (First) | 準1級 |
B1 | PET (Preliminary) | 2級 |
英検1級は一応CEFRのC1レベルに相当するとされています。ケンブリッジ英検でいうCAEがこのレベルです。
表から分かる通り、ケンブリッジ英検には、そのさらに上のC2レベルの試験があります。これがCPE (Proficiency) です。見るからに手強そうな名前ですがね。
そうです。めちゃくちゃ難しい試験です。
今回は、この試験がどれぐらい難しいのか比較するために、私はB2レベル以上とされるケンブリッジ英検FCE・CAE・CPEのすべてを2回以上解いてみました。その結果を以下では報告します。
私の英語レベル
実際の結果に移る前に、私の英語力を公開しておきます。
私はケンブリッジ英検CAEと英検1級の資格を持っています。2018年10月に受験したCAEの得点は、188でした。
ケンブリッジ英検でC1レベルとされるスコアは180-200なので私の英語力はちょうどC1の真ん中ぐらいだということですね。自分でもそのぐらいかな~と思っています。
CPE・CAE・FCEの結果
私がCPE・CAE・FCEの試験をやってみた結果を以下では考察します。今回は客観的に判断できるReading and Use of EnglishとListeningの得点率を公開しています。
ケンブリッジ英検には、読解専門のReadingセクションと文法語彙語法を中心としたUse of Englishセクションがあって、得点は別々に出てくるのですが、今回は2つまとめて「リーディング」としています。
配点はケンブリッジ英検の配点に従いました。(リーディングには1問1点のパートと2点のパートがありますが、公式の配点通りに計算しています。)
結果が以下の表です。いずれもCambridge University Pressから出ている公式過去問集からを解いています。どれも2回分以上の試験をやった上での平均値です。参考値として英検1級とIELTS(Academic)の過去問演習での得点率も上げておきます。
R | L | |
CPE(C2) | 63% | 45% |
CAE(C1) | 77% | 64% |
FCE(B2) | 84% | 78% |
英検1級 | 89% | 80% |
IELTS | 93% | 87% |
いかがでしょうか。やはりレベルが上がるだけ得点率は下がりますね。
試験を受けたことがない方は、難易度の参考にしてみてください。
ちなみにケンブリッジ英検は全体の6割ぐらいが合格ラインだとされています。当該のレベルに不合格でも、基準を満たしていたらひとつ下のレベルの認定証がもらえます。また、高得点が出た場合はひとつ上のレベルと認定してもらえます。
ここから分かることは次のようなことです。
- ケンブリッジ英検は日本の英検より高得点が出にくい
- CPEは他の試験より断然難しい
- ケンブリッジ英検はリスニングが難しい
日本の英検は簡単?
得点率だけ見ると、C1レベルとされる英検1級のほうが、B2とされるFCEよりも数値が高いです。英検1級のほうがFCEよりも簡単な試験に見えてしまうかも知れません。
これは試験の性格によるところも大きいので、なんとも言い難いところです。私の印象では、英検の方がケンブリッジ英検より高得点は簡単に出ます。
語彙レベルや読解文の難易度は日本の英検も高いですが、問題に答えるのはそれほど難しくありません。日本の英検ではリーディングセクションの大半を占める語彙問題のできが全体の出来を左右します。つまり、単語さえ覚えれば誰でも簡単にスコアを上げることができます。特に、語彙問題がリーディングの大半を占める準1級以上の英検はその傾向が強いです。
一方で、ケンブリッジ英検では単語の細かい用法や、文章の細かい点を突いてくる読解問題が多いです。必然、テキストは読めても、ひっかけにはまったり、微妙な問題で間違ったりする確立は高くなります。
素材は難しいのに得点率が高いということも英検1級では納得の自体なのです。
CPEは難しい
なんとも当たり前の結論ですが、CPEは難しいです。
私の体感としては、英検1級で9割ぐらい得点できる総合力があって、CPEで合格ラインの6割到達できるぐらいです。語彙は英検1級も十分レベルが高いです。しかし、CPEでは、イディオムや単語を使いこなせないと解答できない問題が多いです。
ケンブリッジ英検で、IELTSに一番難易度が近いのはFCE~CAEあたりだと思います。こちらもIELTSで9割ぐらいの人がCPE合格ラインぐらいかなと思います。ちなみに、9割だとアカデミックモジュールでのバンドスコアは8.5あたりになります。
記述式が多いUse of Englishのセクションは、とくに単語やイディオムを知っているだけでは解答できません。それらが実際に「使える」というレベルになっていないと正しく答えることはできなかったりします。
たとえば、英語上級者ならだれでも、make itというイディオムを知っていると思います。「うまくいく」「間に合う」という意味ですね。CPEでは文中のmakeが空欄になっていてそれを埋める形式がとられます。答えを見たら確かに分かるけど、それが自然に使えるレベルになっていないとCPEのイディオム問題は難しいものです。
Part 4の書き換え問題は、元の文中で動詞や形容詞副詞で表されている内容を、その名詞形を使って書き換える問題が主です。学校で習う「名詞構文」の本格版といったところです。
イディオム・コロケーション・品詞転換・高度なパラフレーズが問題になるCPEは、生半可な英語力ではなかなか攻略できないわけです。
リスニングは全然違う
ケンブリッジ英検全体に言えることですが、リスニングは難しいです。
リスニングはFCEでも英検1級やIELTSと同じぐらいか、それよりも難しいぐらいだと思います。
そんなケンブリッジ英検のリスニングですが、CPEはその最高峰に恥じない難しさに仕上がっています。私は初めて解いたときは、30問中、8問しか正答できませんでした・・・(涙)。
CPEのリスニングを難しくしている要素は次の通りです。
- スピードがかなり速い
- 設問が難しい
- 本文が難しい
- イディオムが多い
これらはどれも、割とケンブリッジ英検全体にあてはまることです。特にスピードと口語表現の多さは、「きれいな」英文に慣れている日本人には大きな壁です。
CPEでは中でもイディオムの多さと本文の難しさが際立っています。読解でもそうですが、CPEではイディオムをマスターしておくことは必須になってきます。
本文もかなり難しいです。1人の話者が話す分量もCAE以下より随分長くなります。そして、内容も深くなり、設問も細かい理解を求めるものが多いです。
正直、スクリプトを見ながら聞いても正答できない問題もたくさんありました。そのぐらいのレベルだということです。
まとめ
CPEは難しい。結局ここです。
しかし、今回過去問を2セット解いてみて、2回目はかなり得点率があがりました。やはり1回やってみて「どこが難しいか」が見えた上で再挑戦すると結果も変わってくるものです。
私も1回目は完全に返り討ちに遭いましたが、2回目はリーディング・リスニングセクションだけなら合格ラインの6割を超えることが出来ました。
CPEは難しいテストですが、もしチャレンジしようと決心された方がいたら、1回やってみて無理だと諦めるのはもったいない気がします。どんな試験でもそうですが、2回やってみて初めて全体像は見えてきます。
1度倒れても、また立ち上がる。
少年漫画の主人公さながら、強くなる秘訣はここにあると思います。
最高峰とされるC2レベルの試験だからこそ、何度も向かっていく姿勢が大切だと思います。
ケンブリッジ英検の過去問はCambridge University Pressから公式のものがでています。そのほかにも、ネット上に練習問題があったり、リスニング音声はYouTubeにあったりするので探してみてください。