英検2級を考える――「日本人の平均以上」内容と乗り越えるべき課題

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英検2級って高校レベル? 中学生でもとれる? 大人で2級ってどうなの?

英検2級について、いろいろな声を耳にします。今回は、そんな英検2級の話です。どんな試験がつかめたら、学習法が見えてきます。そこで、英検2級の難易度や試験の特徴、そして乗り越えるべき課題について考えていきましょう。

※ この記事は『(旧)やるせな語学』(2019年4月)に投稿されたものを、加筆修正したものです。

英検2級のレベル

日本人の平均以上

英検2級を持っていると、日本人の平均的な英語力を超えることができます。

日本人の平均の英語力はCEFRのA1-A2レベルとされています。

全国の高校3年生を対象に「英語力調査」というものが2017年にありました。その結果でも「読む聴く」はA2、「書く話す」はA1レベルが大部分を占めています。(参考:http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/106/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/03/26/1356067_03_1.pdf

受験を控えた高校3年生でA1-A2レベルです。ということは、恐らく日本人全体の平均がそれを超えてくることはないでしょう。

一方で、英検2級はCEFRのB1レベルとされます。ということは、日本人の平均的な英語力よりは上であるということです。

2級を持っていると、中学レベルの事項では分からないことはほぼありません。

海外旅行に行っても、買い物や飛行機の予約など、なんとか自分の希望を伝えながら楽しむことができるでしょう。よっぽど複雑なトラブルに巻き込まれない限りは、自力で乗り越えることができるのも2級レベルぐらいからです。

CEFRのB1

英検2級のレベルは、英検公式サイトによると、「高校卒業程度」とされています。

近年の英検はCEFRとの対照性を意識した構成になっていますが、2級は先述の通り、大体B1レベルに該当するとされています。

CEFRのB1といえば…

ケンブリッジ英検 Priliminary (PET)
英検 2級
IELTS  4.0~5.0
TOEFL  42-71
TOEFL (LR + SW)  1150-1555

正直、2級レベルだとあまり他の試験と比較したところで具体的な難易度はイメージしにくいのではないでしょうか。そして、この対照表が正確かというとそれも時と場合によるという感じです。

※英検とCEFRの対応は目安です。多くの検定試験とCEFRの相関は、あくまで実施機関がこのぐらいだと自称しているに過ぎない点にご留意ください。CEFRに準拠していて、実際にCEFRの各段階の証明がもらえるのは、ケンブリッジ英検だけです。

2級取得者の共通テストの点数もまちまちです。半分の100点に届かない人もいれば、150点ほどはコンスタントに得点できる人までさまざまです。実際には2級レベルで共通テストは5~6割ほどはとれるようになると考えておくといいでしょう。

高校生と2級

センター試験は7割ぐらいということでしたが、高校生が2級を取得するメリットはあるでしょうか。

最近の入試では、特に私立大学を中心に、英検2級の資格で加点や試験免除などの措置がとられることがあります。国公立の総合型や推薦でも出願資格に2級が課されることがあります。ただ、難関大レベルだと2級を持っているから特に有利になるということはあまりありません。

進学校に通う高校生なら、できたら高2で英検2級をとっておいたらいいと私は思います。高2のうちに2級をとれるぐらいの基礎力があれば、国公立大学への進学も十分見えてくるところです。

英語が得意な人や、難関大を目指す人は、2級は高1のうちにとっておきたいところですね。共通テストは英検2級より問題量も増え、語彙も増えます。共通テストの英語でで8割以上の点数ををコンスタントにとるには、準1級レベルに近い英語力が必要です

共通テストは英検2級より少しだけ骨のあるテストです。そして、難関大の入試は問題文の難易度について言うと、2級より遙かに難しいです。

大学にもよりますが、少なくとも入試の読解問題に関しては、準1級に近い力が必要とされるといっても良いでしょう。

早稲田・慶応の一部の学部は1級レベルです。

全体的に入試の英語試験は二極化の傾向にあって、難関な大学ほど問題は難しくなり語彙レベルは上がっていく傾向にあるような気がします。共通テストもセンター試験よりは遙かに複雑な能力が要求される骨のある試験になりました。

社会人と2級

社会人で、英語をやりなおしたいという理由で2級を受験する方もいます。とりあえずは、2級レベルで日本人の平均以上です。

一念発起で「英語を始めよう」と思い立った社会人にとっても十分目指す価値のある資格です。

英語が学生時代かなり得意だったという人にとっては、2級は簡単すぎるかもしれませんが、意外に知らない熟語なんかも出てくるので侮れません。

また、ライティングやスピーキングもあるので、英語を話す機会がまったくないと言う人にとっては、これぐらいのスピーキング練習から始めるのがちょうどいいと思います。

自信がる人(あった人)は最初から準1級をめざすのもアリです。しかし、2級と準1級は相当レベルの差があります。準1級では、必要とされる語彙力が2級の倍近くなり、ライティングやスピーキングの内容はかなり本格的になりますので、その点はご注意ください。

それほど自信のない(なかった)方が「やり直し英語」で目標とすべきはやっぱり2級が最初かなと思います。

英検2級で乗り越えるべき課題

語彙力をつける

まずは、英検の定番問題である語彙問題に対応できる語彙力をつけましょう。

英検2級に必要とされる語彙力はだいたい4000語~5000語レベルとされています。ちなみに、共通テストが5000~6000語、英検準1級が8000~9000語レベルだと一般的には言われています。

英検2級に出てくる語彙は、英語という言語内で、とても使われる頻度の高い重要語ばかりです。これは大事とか、これはあまり出ない、なんて区分はほとんど通用しません。

このレベルの語彙は、上級者ならほぼすべて「使いこなせます」。2級語彙問題はその第1歩だと思って、丁寧な語彙学習を進めていきましょう。

4000語レベルといっても、これは「読んだり聴いたりして意味が分かればいい単語」です。2級レベルではこれらの単語を駆使してアウトプットはできなくても何とかなります。

また、英検の特徴として、熟語問題がしっかり出題されるという点があります。2級で問われる熟語は基本的な句動詞や時を表す副詞接続詞などです。

どれも超重要な英語の基本熟語なので、2級に出てくるものはすべて知っていると言えるレベルまで暗記してしまわないと、なかなか中上級者にはなれません。

最低限の文法問題

英検の代名詞と言えば、なんと言っても先述の語彙問題です。英検は級が上がるにつれて語彙がぴったりとレベルアップしてついてくるような試験です。

そのレベルは非常に上手くコントロールされていて、とてもよくできた問題だと思います。そして、準1級、1級でもっとも多くの人を苦しめるのもこの語彙問題です。

一方で、2級までの英検にはわずかながら、文法問題も出題されます。文法問題と熟語・語法問題の区別は時に難しいのですが、2級には文法問題(のような問題)が3題あります。

形式は英検の語彙問題やセンター試験の第2問と同じです。いわゆる短文の( )に入る語を4択で選ぶという形式です。

英検2級で出てくる文法問題は、「本当に基本的なもの」しかでてきません。中学英語や高1の教科書をしっかり学習している人なら、まずもって正解できるような基礎問題ばかりです。

英検2級用に大学入試用の『ネクステージ』や『アップグレード』みたいな文法問題集をやるのは、直接的にはあまりメリットがないということは知っておいて損はないです。

それらの文法問題集は、ほとんどの場合旧センター試験や私大入試レベルの問題を扱っています。英検2級よりもずっと難しい問題がほとんどです。英検2級には私大入試でよくある細かい文法知識はあまり必要ではありません。

『ネクステ』系をやるよりは、『瞬間英作文』などで、基本文を徹底的に練習する方が英検2級には確実に効果があります。

ライティングはパターン化

英検2級には数年前から英作文が導入されました。そして2024年の試験からライティングが2題になり、従来のエッセイと要約問題で構成されるようになります。

2級のエッセイは英検らしく、世の中の身近な話題について100語程度で自分の意見を書くというものです。

100語程度の長さの英作文では基本段落分けは必要ありません。1段落で、自分の意見を述べればいいわけです。

こういった意見文の書き方は、だいたい決まっています。

最初に主張を書いて、それから理由を補足する。そして最後に結論という流れです。100語程度のライティングでこのパターンの英文を書くとなると、実際に自分で中身を考えて作文する割合は結構少なくなります。

英検英作文は、そういう意味で、割とパターンとテンプレで乗り越えることができます。(これは英検の批判としてよく指摘される点です。1級でも英検英作文にはその傾向があります。)

特に書く語数が少ない2級以下の英作文では決まり切った「型」を覚えてしまって、基本的な英文で残りを埋めてしまえば、合格答案は案外簡単につくれます。

スピーキング

スピーキングは与えられたカードの内容を答えたり、面接官との質疑応答があったりします。

実は、2級の面接官は学校の先生ということも結構あります。その辺の先生がそのへんの学校で面接官をやっているというのが英検2級以下の試験の現状です。正直言うと、2級面接官の誰もが英語面接のプロというわけでもありません。(中にはいるでしょうが。)

もちろん、面接のマニュアルはしっかりできているのですが、試験である以上試験官によって差があるのは当然のことです。こればっかりはどうしようもありません。

また、英検には attitude (態度) という評価項目があり、「笑顔になっておけば合格できる」なんて声もよく耳にします。 そして、これもあながち的外れではないと私は感じています。実際「愛想よく」練習したことを話すことができたら、面接で不合格になる可能性はずいぶん下がるというのが私の印象です。

スピーキングにおいても、結構英検はパターンとテンプレの要素が強い試験です。練習してまずは、型を身につける。これが第1です。

それから、本当に基本的な文を、(多少のミスはあっても)瞬時に作れるぐらいの力があれば十分合格できます。黙りこんだらいけませんが、冠詞や名詞の数でミスがあったから減点されるなんて恐れる必要はありません。2級レベルで完璧な文がよどみなく出てくる人はまあいません。

(正直、文法のミスに気づけないぐらいの英語力でも面接官になれます。私も、この人が面接官やっていいのか、みたいな人がやっているのを知っています。これは内緒。)

大事なのは、愛想よくすることと、しっかり伝えようという意思をもつことです。それがあれば、1次試験を乗り越えたのに2次試験で落ちるなんてことは普通ありません。

内容的には1次試験の方が、よっぽどしっかりした英語の問題に取り組んでいます。1次試験に合格したということは、ちゃんと実力を発揮できれば2次試験は乗り越えられるはずです。

まとめ

大学入試改革の流れもあり、英検2級はますます多くの受験者を獲得していくと思われます。

繰り返しになりますが、2級のレベルは以下です。

  • 日本人の平均以上のレベル
  • 4000語の語彙力

英検2級とは、と聞かれたときは、私はこれを答えるようにしています。

実際の過去問を使って問題難易度を考えているページもありますので、そちらも是非お読みください。それを読むと、語彙問題が実際にこのレベルにうまくコントロールされていることが分かると思います。

2級は価値ある資格ですが、やはり「私英語出来ます。」と自信を持って言えるようになるのは準1級ぐらいからかなと思います。

2級の壁を乗り越えたら、その先の準1級を目指して学習を続けていく。これが2級に合格するのと同じぐらい大切なことだと思います。

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巷の英語教員・語学人間
2019-2020年にかけて存在したサイト『やるせな語学』をリニューアルして復活させました。いつまで続くやら。最近は古英語に力を入れています。言語に関する偉大な研究財産を、実際の学習者へとつなぐ架け橋になりたいと思っています。
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