英語とドイツ語の「偽りの友」
二言語間で、見た目は似ているけど、意味が違う単語のことを、「偽りの友」と呼ぶことがあります。フランス語に faux-ami(s) [=英語 false friend(s)] という呼称があって、主にフランス語⇔英語の学習において使われる用語です。フランス語 librairie(書店) と英語 library(図書館) などが典型とされます。
今回はそれを英語とドイツ語の関係に転用し、両言語で「似ているし同語源だけど意味が違う」という単語をまとめます。意外な《falsche Freunde》を見つけにいきましょう。
最初は自分でどんな意味か考えてみましょう。その後解説へと続きます。
見た目が似ていないものもありますが、下記【補足】の子音対応を当てはめるとその違いが説明できるものばかりです。
ドイツ語学習者向けに、ドイツ語の名詞には冠詞の末尾文字で姓(r, e, s)を示し、複数形を併記します。英語 – ドイツ語の順です。
- 【補足】英語とドイツ語の子音対応
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前回の記事で紹介した英語とドイツ語の現代語の子音対応は次の通りです。今回の記事でもこの番号と名前を使います。
【英語とドイツ語両方に起きたもの】
❶ロータシズム
freeze – frieren フリーレン
iron – Eisen アイゼン【ドイツ語のみに起きたもの】
❷第二次子音推移
apple – Apfel
sharp – sharf シャルフ
ten – zehn
water – Wasser
milk – milch
good – gut
❸閉鎖音化
think – denken デンケン
evil – übel ユーベル
❹シュ化
stark – stark [ʃt] シュタルク
swim – schwimmen
❺有声化
series – Serie [z]ゼーリエ
whirl – Wirbel [v]ヴィアベル
❻語末無声化
land – Land [t]ラント【英語のみに起きたもの】
❼口蓋化
chest – Kasten
day – Tag
❽子音脱落
say – sagen
knee – Knie
might – Macht マハト
○同じゲルマン祖語に由来するもの
harvest – Herbst (r, -e)
tide – Zeit (e, -en)
wife – Weib (s, -er)
bone – Bein (s, -e)
town – Zaun (r, Zäune)
deer – Tier (s,-e)
gift – Gift (s, -e)
craft – Kraft (e, Kräfte)
mood – Mut (r)
deal – Teil (r, -e)
handle – Handel (r, -)
sake – Sache (e, -n)
shield – Schild (r, -e)
life – Leib (r, -er)
knight – Knecht (r, -e)
land – Land (s, Länder)
fast – fest
sad – satt
glad – glatt
true – treu
small – schmall
clean – klein
great – groß
dear – teuer
dull – toll
whole – heil
tell – zählen
warp – werfen
throw – drehen
slay – schlagen
strike – streichen
last[v] – leisten
yield – gelten
write – reißen
read – raten
leap – laufen
○両言語とも他言語から借用したもの
cheap – Kauf (r, Käufe)
local – Lokal (s, -e)
brief – Brief (r, -e)
toll – Zoll (r, Zölle)
announce – Annonce (e, -n)
appartment – Appartment (s, -s)
coffer – Koffer (r, -)
conjuncture – Konjunctur (e, -en)
concurrence – Konkurrenz (e, -en)
sober – sauber
costly – köstlich
sympathetic – sympatisch
turn – turnen
pass – passen
○一方が他方の単語を借用したもの
handy – Handy (s, -s)
cakes – Keks (r/s, -[e])
job – Job (r, -s)
同じゲルマン祖語に由来するもの
harvest 収穫 – Harbst 秋
<v-b>は❸閉鎖音化。ゲルマン語には「秋」を意味する単語がなく、古英語やドイツ語は「収穫」を意味する単語を季節名に転用した。英語は後に動作動詞から fall(葉が落ちる季節)を生み出し、一方でラテン語フランス語から autumn という単語を季節名として借用した。
tide 潮汐 – Zeit 時間
<t-z, d-t>は❷第二次子音推移。どちらも「潮」と「時」の意味を古語から持つ。英語は、こちらも古語からある time が「時」の意味で主役になっていった。
wife 妻 – Weib 女
<f-b>は❸閉鎖音化。いずれも「女」の意味が元である。ドイツ語では「妻」は Frau で表す。Weib には軽蔑的なニュアンスが含まれる。
bone 骨 – Bein 脚
「骨」が原義。ドイツ語の方が意味が変化した。ドイツ語で「骨」は Knochen(r, -) で表す。
town 町 – Zaun(r, Zäune) 生け垣
<t-Z>は❷第二次子音推移。「生け垣、囲い」が原義。英語は「囲われた土地」→「村、町」となった。英語の地名 Washington や Brighton に見られる -ton も同根。
deer 鹿 – Tier (s,-e) 動物
<d-T>は❷第二次子音推移。「動物」が原義。英語はラテン語フランス語から animal を借用し、こちらを「動物」の意味で使うようになり、本来語 deer は「鹿」を表すように意味が特殊化した。
gift 贈り物 – Gift (s, -e) 毒
古英語の gift と古高ドイツ語 gift は本来「結婚時に花嫁に送る物」の意味だった。古英語 gift (発音は❼口蓋化により「ィフト」のようだったと想定される)は廃語となり、古ノルド語由来の gift「ギフト」が新たに「贈り物」の意味で定着した(本来語に事実上置き換わった)。ドイツ語 Gift「毒」の意味は、ギリシャ語で「贈り物→毒」の意味発展を遂げた dosis という語に影響を受けているとされる。いわば、意味変化を借用したわけである。
craft 工芸 – Kraft (e, Kräfte) 力
「技術、芸術」が原義。どちらかというと英語の方が原義に近い。「工芸」の意味が一般的だが、「悪知恵」のようなネガティブな意味もある(cf. crafty ずる賢い)。ドイツ語は「力」全般を表す一般的な語となり、意味はむしろ英語の force, power (共にロマンス語由来)に近い。
mood 気分 – Mut (r) 勇気
<d-t>は❷第二次子音推移。「心、精神の働き」全般を表すのが原義。英語は「機嫌」という意味が一般的で、特定時における個人、社会集団の心理状態を表す。この点で日本語の「ムード」(=雰囲気)とも意味が異なる。ドイツ語は精神が高ぶった状態に特化し「勇気、気力」の意味が一般的。
deal 取引 – Teil (r, -e) 部分
<d-t>は❷第二次子音推移。「部分」が原義。英語の名詞「取引」は、動詞の「分ける、分配する」→「取引する」から生じた新しい意味。ドイツ語では男性名詞で「部分」、中性名詞で「部品」の意味。
handle 取っ手 – Handel (r, -) 取引
どちらも「手」に関連する。英語は物理的な意味で、ドイツ語は「取り扱う」を意味する動作動詞 handeln からの逆成。
sake 目的 – Sache (e, -n) もの
<k-ch>は❷第二次子音推移。「法的な争い、争いの種」が原義。ドイツ語 Sache は意味を一般化させ「もの・こと」全般を表す。英語は「ため、目的」の意味で、もっぱら for the sake of「~のため」か、その類似表現で用いる。このフレーズは古アイスランド語から取り入れた(?)可能性が指摘されている。同じく「もの全般」を表す thing – Ding も元は「裁判」の意味だった。
shield 盾 – Schild (s, -er) 看板
「盾」が原義で、さらに遡ると印欧語幹 *(s)kel-「切る」にたどり着く。ドイツ語は中性名詞(s, -er)で「看板、表示板」の意味で、男性名詞(r, -e)は英語と同じ「盾」で用いられる。
life 生命 – Leib (r, -er) 体
<f-b>は❸閉鎖音化。「生命」が原義。ドイツ語は「生命を持ったもの」→「肉体」と意味を変化させた。それを補うように動詞 leben の不定詞を中性名詞化させた Leben (s, -) を「生命」の意味で使うようになった。
knight 騎士 – Knecht (r, -e) 従者
英語は<k, gh>を発音しないが、ドイツ語は「クネヒト」のようにすべての文字を読む。「男子」が原義。古英語と古高ドイツ語共に「男子、従者」の意味が一般的だった。英語は「使いっぱしり;(金で雇われた)戦闘員」→「名誉ある戦士」に意味を良化させた。
land 土地 – Land (s, Länder) 国
「土地」が原義。英語は古語から綴りも意味もほとんど変わっていない。ドイツ語は「土地」の意味もあるが、「国」「田舎」など、英語の country に相当するような意味で使うことの方が一般的。
cloth 布 – Kleid (s, -er) ドレス
<th-d>は❸閉鎖音化。「布」が原義。ドイツ語は単数で「ドレス、ワンピース」の意味で、複数では英語 clothes と同様「衣服全般」を表す。
fast 速い – fest しっかりした
「しっかりとした」が原義。英語においては、古英語 fæst 以来、「しっかりした」→「速度が安定した」→「速い」と意味を変化させてきた。英語の動詞 fasten「固定する」には本来の意味が保たれる。
sad 悲しい – satt 満足した
<d-t>は❷第二次子音推移。「満ち足りた」が原義。英語の意味変化には不可解な点も多いが、「満ち足りた」→もう求めることができない→「悲しい」の変化はなんとも自然であるように筆者には思える。何であっても追い求めている時が一番楽しいのかも。ラテン語 satis「満足した」も同根で、英単語 satisfy「満足させる」、sate「欲望を満たす」、insatiable「どこまでも貪欲な」なども同語源。
glad 嬉しい – glatt 滑らかな
<d-t>は❷第二次子音推移。「輝いている」が原義。ドイツ語は「滑らかな」という触覚を表す意味になり、英語は「嬉しい」という心情を表す意味になった。英語本来語の同族語は非常に多く、原義に近い glow「輝く」, glitter「キラキラ光る」もあれば、ドイツ語 glatt に意味が近い glisten「滑る」もある。他の英語本来語だと yellow, gold, gleam, glimpse, glimmer, glass, glare, glee など。
true 本当の – treu 忠実な
「誠実な、忠実な」が原義。古英語 getreiwe, 古高ドイツ語 gitriuwi ともに接頭辞 ge- がついた形が一般的だったが、両言語ともこれを落とした。英語は「事実に忠実」ということで「本当の」という意味になった。ドイツ語は現代でも雅語として getreu「誠実な」が残る。
small 小さい – schmall 狭い
<s-sch>は❹シュ化。「小さい」が原義。古くは家畜の大きさに使うのが一般的だった。英語は原義を保ち、ドイツ語は主に「幅が狭い」の意味で用いる。ドイツ語で「小さい」は次で述べる klein が最も一般的な語である。
clean きれいな – klein 小さい
西ゲルマン語で「油を塗られれた > 輝いている」がおそらく原義。古英語も古高ドイツ語も「輝いた、小ぎれいな」の意味だった。英語は「汚れがなくきれいな」の意味になり、比較的古語の意味に近い。ドイツ語は「きれいな、小さくて可愛らしい」→「小さい」となるよう意味が一般化した。
great 素晴らしい – groß 大きい
<t-ß>は❷第二次子音推移。西ゲルマン語の「粒子が粗い」を意味する形容詞に由来するとされる。古語ではどちらも「大きい」の意味が最も一般的だった。大きさでなく質を表す英語の意味は、19世紀初頭のアメリカ英語で生じたとされる。似た意味の英単語 grand「偉大な」はフランス語からの借用語。
dear 親愛なる – teuer 高価な
<d-t>は❷第二次子音推移。「貴重な、高価な」が原義。英語は物の価値に寄り添う心的態度を表す意味に広がっていった。
dull 退屈な – toll 素晴らしい
<d-t>は❷第二次子音推移。「暗い、曇った」が原義。英語の「退屈な、くすんだ、曇った」の方が原義に近い。ドイツ語は中高ドイツ語期から意味を良化させ「素晴らしい」という真逆の意味になった。ちなみに、オランダ語 dol「素晴らしい」もドイツ語と同じ意味。
whole 全体の – heil 無傷の
もともと英語の語頭<w>はなかったが、what など wh- で始まる単語からの類推で追加された。中英語期までは hal/hol のような綴りが一般的だった。「健康な、傷のない」が原義。英語はそこから「五体満足の」→完全にそろった→「完全な」と意味を変化させた。
tell 伝える – zählen 数える
<t-z>は❷第二次子音推移。「数える、計算する、知らせる」が古高ドイツ語から記録される。現代ドイツ語では zählen「数える」/ erzählen「語る」の棲み分けがなされている。英語は「伝える」の意味が一般的で、「見分ける」の意味は近代英語期以降。
warp 歪む – werfen 投げる
<p-f>は❷第二次子音推移。「ひねる」が原義。英語は「ワープ」よりも「ウォープ」に近い発音であることに注意。SFの「ワープ」の意味もあるが、熱気などで板などが「歪む」、心や判断が「歪む、曲がる」の意味が一般的で、こちらの方が原義に近い。ドイツ語は「腕を曲げる動作」→「投げる」と意味を変化させた。
throw 投げる – drehen ねじる
<th-d>は❸閉鎖音化。「ねじる」が原義。まさに上記のwarp-werfenで起きたように、英語は「腕をねじる動作」→「投げる」の意味発展を遂げた。今度はドイツ語の方が原義に近い。ギリシャ語由来の英単語 turn「回す」も同語源。(throw-turn の<th-t>は第一次子音推移。)
slay 斬る – schlagen 打つ
<s-sch>は❹シュ化。英語で<g>がないのは❽子音脱落に見えるが、むしろドイツ語がヴェアナーの法則に由来する過去形の子音<g>を全語形に一般化した結果である(cf. ziehen-zog-gezogenの過去形に現れる<g>)。「打つ」が原義。英語は刀などでバッサリと斬る動作を表すようになった。slaughter-schlachten「畜殺する」も関連語。
strike 打つ – streichen なでる
語頭は</s/-/ʃ/>で❹シュ化。<k-ch>は❷第二次子音推移。「軽く触れる、なでる」が原義。英語は古ノルド語の影響(?)で「打つ」の意味になっていった。英語「ストライキ」の意味は14世紀以降で、ドイツ語は Streik(r,-s) としてこの英語を借用している。
last[v] 続く – leisten 果たす
「果たす」が原義。英語は動作の継続に重きを置き、「続ける」の意味を発展させた。英単語 last「最後の」は形容詞 late の古英語における最上級に由来するもので、別語源。
yield 産出する – gelten 有効である
<y-g>は❼口蓋化、<d-t>は❷第二次子音推移。「支払う」が原義。英語は「利益などを生じる、生む;(土地が作物を)生産する」などの意味となり、ドイツ語は「価値がある;重要である;有効である」の意味となった。両言語で多義語であるため意味のつながりが見えにくい。英語の方がどちらかというと具体的な意味を保っていて、ドイツ語は抽象化した利害関係を表す意味が基調である。ドイツ語 vergelten「返礼する、復讐する」は案外原義に近い。
write 書く – reißen 引き裂く
<w>は中高ドイツ語期に脱落(cf. 中世オランダ語 wrīten)、<t-ß>は❷第二次子音推移。「刻む、ひっかく、書く」が原義。元来書く行為は木版や石版に線を刻み込むことに等しかった。ドイツ語では中高ドイツ語期に「書く」の意味を捨て、逆に英語は「書く」のみを表すようになった。ドイツ語で「書く」を表す一般語 schreiben はラテン語 scribere「書く」からの借用語で、こちらも原義は「彫る」であった。また、日本語の「書く」も「掻く」と同根とされる。
read 読む – raten 助言する
<d-t>は❷第二次子音推移。「前もって考えておく;提案する;推測する」が原義。思考をベースとする活動という点で意味が発展していく。ドイツ語では「助言する」の意味になり、英語は「読む」の意味となった。ドイツ語 erraten は「推測する;言い当てる」で、英語の同根語 riddle「謎」と意味のつながりが見い出せる。ラテン語系統の reason「理性;理由」 も同族語で、意味の関連がわかりやすい。
leap 跳ねる – laufen 走る
<p-f>は❷第二次子音推移。「跳ね回る、踊る」が原義。英語は跳躍に焦点を当て、ドイツ語は移動そのものに焦点を当てるように意味が変化した。
両言語とも他言語から借用したもの
cheap 安い – Kauf (r, Käufe) 購入
<ch-K>は❼口蓋化、<p-f>は❷第二次子音推移。ゲルマン語期にラテン語 caupo「酒場の主人、取引人」を借用したもので、各ゲルマン語に現れる。古い借用語のため、古英語の口蓋化と、古高ドイツ語の第二次子音推移を経験した語形になっている点に注目したい。ドイツ語は「取引全般」から「購入」のみを表すように意味が特殊化した。英語は good cheap「良い取引, 安い買い物」から、cheap 単体でも「安い」を意味するようになっていった。
local 地元の(人) – Lokal (s, -e) 飲食店
いずれもフランス語・ラテン語からの近代期以降の借用語。ドイツ語の<k>が第二次子音推移を経験していない点に注目。英語の形容詞「地元の」が原義に近い。ドイツ語の形容詞 lokal は英語とほぼ同じ意味だが、名詞化した Lokal は「飲食店」の方が一般的。
brief 簡潔な – Brief (r, -e) 手紙
ラテン語 brevis「短い」に由来。俗ラテン語 breve scriptum「短い文書」に由来する名詞は両言語で見られ、ドイツ語「手紙」はこれに由来する。英語は原義に近い「短く簡潔な」という形容詞が一般的。
toll 通行料 – Zoll (r, Zölle) 税関
<t-Z>は❷第二次子音推移。ラテン語 telonium「税を集める場所」由来し、究極的にはギリシャ語 telos「境界」に行き着く。英語は「通行料」「犠牲者」といった意味に変わっている。ドイツ語「税関」の方が原義に近い。
announce 知らせる – Annonce (e, -n) 新聞広告
英語は古フランス語から15世紀に、ドイツ語はフランス語から18世紀までに借用した。英語の「知らせる」が原義に近く、日本語の「アナウンスする」とほぼ同じ意味。ドイツ語はかなり新しい語で綴りも発音([anõːsə] アの~セ)もフランス語式である点に注目。意味も近代的な「新聞広告」に特化している。
apartment 賃貸アパート – Appartement (s, -s) ホテルの一続きの部屋
両言語ともフランス語 appartement「分けられた区画」(<ラテン語 ad partem 部分)に由来。アメリカ英語の「賃貸アパート」の意味は日本語と同じ。ドイツ語 Appartement はフランス語流に [apartəmãː](アパルトま~)のように発音する。
coffer 金庫 – Koffer (r, -) スーツケース
フランス語 coffre「箱」に由来。英語は古フランス語から13世紀までに借用し、「箱」から「貴重品箱、金庫、(比喩的に)財源」の意味になった。ドイツ語はオランダ語を経由して14世紀までに借用した。ドイツ語の「トランク、スーツケース」の意味は18世紀以降のもの。
conjuncture 巡り合わせ – Konjunktur (e, -en) 景気
ラテン語 coniungere「結びつける」(<con 共に iungere 結ぶ [>joint, junction]) に由来。英語は「複雑な事態の絡み合い、巡り合わせ」という意味で、原義に近い。ドイツ語は「経済の巡り合わせ」から「景気」の意味に特化している。
concurrence 一致 – Konkurrenz (e, -en) 競争
ラテン語の concurrere「共に走る」に由来。英語は意味を抽象化させ「意見の一致;協調」という意味で捉える。比較的新しく、18世紀に借用したドイツ語は「競争」全般を表す。チーム内の「協働」を指す方向の英語と、他チームとの「競争」を指す方向のドイツ語の違いが面白い。
sober 酔っ払っていない – sauber 埃のない
ラテン語 sobrius「しらふの」(<se 離れて ebrius 酔った)に由来。古英語 syfre も古高ドイツ語 subar(共に「汚れのない」の意味)はこれを借用したもので、ドイツ語はこの古語の意味を現代に伝える。英語は14世紀にフランス語 sobre「酔っていない」を(再)借用したため、結果的にラテン語の原義に近い。
costly 高価な – köstlich おいしい
ロマンス語由来の cost「費用」にゲルマン語由来の接辞 -ly, -lich を付けて派生させた形容詞。英語は原義に近い。ドイツ語は「高価な」→「値段に見合う素晴らしさの」→「食べ物がおいしい」に意味が変化していった。ドイツ語 kostbar は「高価な」の意味で用いる。
sympathetic 同情的な – sympatisch 人当たりが良い
ドイツ語はフランス語 sympathique「感じの良い」に由来。英語はラテン語 sympatheticus「同情心を持った」に由来。 いずれも究極的にはギリシャ語 sym「共に」pathos「感じる」に行き着く。フランス語やドイツ語は人当たりのよさに関して使う日常語となっている。
turn 回る – turnen 器械体操をする
どちらもラテン語 tornare「回す」に由来。英語は原義を保つ。ドイツ語は19世紀の体操選手ヤーンによって従来の Gymnastik「器械体操」に変わる語として提唱された。ヤーンはこの語をドイツ語的響きの本来語だと勘違いしていたようである。
pass 通り過ぎる – passen 合う
フランス語 passer「通り過ぎる」に由来。ドイツ語は「通り過ぎて目的にたどり着く」までを意味するようになり「(目的に)合致する」「サイズなどが合う」の意味になっていった。
一方が他方の単語を借用したもの
handy 手軽な – Handy (s, -s) 携帯電話
英語は「手軽な、便利な」という形容詞で、名詞 hand に形容詞接辞 -y をつけて16世紀以降にできた比較的新しい単語。ドイツ語は英語の形容詞を借用したわけではなく、ドイツ語本来語 Hand「手」に英語風の接辞 -y をドイツ語内で付け加えた。20世紀後半の造語で、以来「携帯電話」の意味で使われる。ドイツ語は [hɛndi](ヘンディ)と発音する。
cakes ケーキ[pl] – Keks (r/s, -[e])ビスケット
英語の複数名詞 cakes から19世紀にドイツ語が借用した。ドイツ語では単数として再分析され「ビスケット」の意味で使われる。
job 仕事 – Job (r, -s) アルバイト
英語は「仕事・職業」を表し、ドイツ語の Job [dʒɔp](ジョプ) は「一時的な仕事、アルバイト」を意味する。ドイツ語は20世紀にアメリカ英語から借用した。表にすると日本語・ドイツ語では、借用語が「パートタイムの仕事」を表すようになっている。
| フルタイム | パートタイム | |
| 英語 | job | part-time job |
| ドイツ語 | Arbeit | Job |
| 日本語 | 仕事 | アルバイト |
